「三蔵三蔵三蔵!!」
「オイ、どーすんだよ、八戒!!」
慌てる二人に猪八戒はどうしましょうねえ、と微笑んだ。その向かいでは、
「みなさん、もう遅いですし休んではいかがですか?」
騒ぎの張本人であるところの玄奘三蔵(綺麗)も微笑んでいます。しかしヴィジュアルがヴィジュアルなだけに三人にとっては刺激が強過ぎるようです。
「……!!」
たまたま近くに居たもの同士、孫悟空と沙悟浄はひしとお互いの方に両手を回しました。
「俺肉食えなくてもいいからこうゆ三蔵だけは金輪際見たくねぇッ!!」
「俺も一生あいつを笑わせねえと心に誓ったぜたった今よ!!」
猪八戒は返す言葉を失って苦笑しましたが、正直悪賢い思慮深い彼にもこの、玄奘三蔵の笑顔がここまでキくとは予想外でした。そこでその場から逃れるように泉の縁まで歩きます。
そこで、思案するように泉を睨みつけたかと思うと唐突に、
ぼちゃん
泉に手近にあった石を投げ入れました。
「何やってんだよ八戒!!」
「これでねーちゃん怒って三蔵返さなかったらテメェのせいだからな!」
「八戒、何故そのようなことを!!」
騒いだ孫悟空と沙悟浄は、最後の玄奘三蔵(綺麗)の台詞に思わず立ちくらみを覚えました。
(誰かこいつの顔にモザイクかけてくれ……!!)
さて、泉は三度光に満ち溢れ……水面には美しい女神が姿を現しました。その表情からは怒りは微塵も感じられません。
「あなたが落としたのはこの金塊ですか?それともそこらの普通の石ですか?」
猪八戒はぬけぬけと答えます。
「ええ、そちらのそこらの普通の石です。」
女神はにっこりと微笑みました。
「あなたは大変正直ですね。褒美にこの金塊を授けましょう。」
「それはありがとうございます。」
こうして女神は猪八戒の手に金塊を残して去っていきました。
「やはりですね。この泉はまるで僕らの心を読むように、欲しいものを見せるみたいです。石ころの代替品なら何でもよさそうですが、僕が思った通りの金塊が出てきましたからね。」
「そうなのか?……ってことは」
沙悟浄は少し離れたところに止めてあるジープを振り返りました。
「ジープ、泉にブッこんだら、メルセデスのAクラスとかロードスターとかなんでも手に入んのか!?」
猪八戒は駄目ですよ、とやわらかくたしなめます。
「メルセデスなんかじゃこんなところは走れませんし、男四人でロードスターにすし詰めなんてのも僕はイヤですよ?」
ジープの立場はどうなる猪八戒、非情な発言の後彼はゆっくりと沙悟浄と孫悟空の顔を見渡しました。
「もう二人とも、元の三蔵がいいですよね?」
「ってか最初から十分嫌だっつってんだろ!?」
沙悟浄の台詞に孫悟空もぶんぶんと音が出そうな勢いで首を縦に振ります。
「ならば結構。……三蔵。」
「ハイなんでしょう、八戒。」
流石の猪八戒も立ちくらみを覚えましたがあと少しの辛抱です。必死に意識を留めて玄奘三蔵の肩に手をかけました。
「ちょっとこちらに……もっと泉の近くに立っていただけますか?」
人を疑うということを知らない玄奘三蔵(綺麗)は言われたままに泉の縁に立ちました。
「それでなんなのですか?」
猪八戒はにこり、と笑顔を見せました。
「こういうことです。」
→next
|