金の●●、銀の●●



自分の心に正直な玄奘三蔵は厳かに答えました。






「金だ!!」




女神の表情が慈悲に満ちたそれから一変しました。
「あなたは嘘吐きですね。罰としてこの紙のハリセンも返しません。」
銃を撃つ暇もあらば水音を残して女神は泉へと去っていきました。
「三蔵・・・・・・『金の斧 銀の斧』知らなかったのか・・・・・・。」
「どうやらそのようですね・・・・・・。」
「そういや俺三蔵から昔話とか聞いた事無いや・・・・・・。」
三人は呆然と顔を見合わせます。
納得が行かないのは玄奘三蔵です。
「てめぇ、っざけんな!!」
一声叫んだかと思うと法衣の裾をたくしあげざぶざぶと泉へと入っていきます。
「三蔵、危ないですよ!」
猪八戒の声もまるで届かない様子です。数歩泉へと進んだその時突然、









ざぶん



そこから急に深くなっていたのでしょう。悲鳴も残さず玄奘三蔵の姿は泉の底へと消えました。 残された三人の胸にそこはかとなく嫌な予感がよぎります。
そしてやはりというべきか泉の水面から眩い光芒が現われ、再び女神が現れました。
その右手には、
「放せ!!放せってんだよ、貴様!!」
悪態を吐く三人の良く知る玄奘三蔵が、そして反対の手には同じビジュアルで神々しいまで の微笑を湛えた玄奘三蔵が小猫のようにぶら提げられていました。泉の女神様は割と力持ち のようです。
先程とは違った意味で険しい表情の三人に構わず女神は問います。
「あなたが落としたのはこのキレイな成仏バージョン玄奘三蔵ですか?それともこの汚い玄奘三蔵ですか?」
「汚いとは何事だ貴様ァッ!!」
ハリセンとは違っていちいち外野がうるさいようです。
問われた三人はどうしたものか悩みました。
猪八戒は考えます。
(キレイな三蔵と言うと・・・・・・?)

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