やっぱ寒いッス、せんせぇ―!
だねえ、僕もすっかり寝るときには行火が手放せなくってねえ。あ、行火って言っても電気のヤツだよ。ああ、そうか、最近の子は電気じゃない行火なんか知らないかぁ。っていうか、そもそも行火って知らない?どう、
くん?まあ、いいや、そうだねえ、こう寒いんだからせめてココロのあったまる話でもしようか。
それは年の瀬のことでねえ、借金で家もお金も無い一家が、せめてもの贅沢と蕎麦屋の暖簾をくぐったのさ。でもお金はかけそばいっぱいぶんしかない。それでもせめて、いっぱいのかけそばであったまろうと、父親は決意して顔を上げたのさ。そうしたら、何が見えたと思う、
くん?そこには張り紙がしてあってねえ、
お一人様一品御注文をお願いします。
で、一家はどうしたと思う?
泣く泣く蕎麦屋を後にしたって話
さ。いやあ、世の中はは世知辛いねえ
くん。
アレ?ちっともあったかくならないねえ。まあいっか。
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