◆愛の縁側劇場〜悟空編◆



三蔵「おい、お茶。」
悟空「分かった〜。」
・・・・・・かなり間。
−がちゃーんがちゃがちゃがちゃり
(奥の方から)
悟空「うわーやっちまったぁあ」
三蔵「・・・・・・。」
−ぐわぁちゃああああああん
(奥の方から)
悟空「いってぇーまただぁー。」
三蔵「・・・・・・。」
(↑振り向きたいが堪えている。)
−がらがっしゃあああああん
(奥の方から)
悟空「もーどーしよ、これぇぇー。」
三蔵「・・・・・・もういい!」
悟空「なに、聞こえなーいい」
(↑遠いので本当に聞こえない。)
(↓ぷつりときそう。)
三蔵「もういいと言っている!とにかくてめぇは大人しくしとけ!」
悟空「ヤだよ、お茶くらい淹れられるって!待って、うわ」
−がしゃがっしゃんばりーん
・・・・・・間。
奥からとぼとぼと悟空が歩いてくる。
悟空「ごめん、コレ壊しちゃった・・・・・・。」
悟空の手にはぱかりと割れた高そうな湯飲みがある。
一瞬、気にするなといいかけて、三蔵眼鏡を外して(笑)もう一度それをみて愕然。
三蔵「てめぇ、それこの間部長(←上司らしい/笑)が置いてった伊万里じゃねえか!今度来たときなんて言い訳する気だッ!?」
悟空「だからごめんって!」
三蔵「ごめんで済んだらケイサツはいらねぇんだよ!くそッ、これで左遷確実か・・・・・・。」
・・・・・・無言。むしろ遠い目。
そうか、左遷でインドにでも行くのか?(←違ッ)
悟空、決意したように顔を上げる。
悟空「オレ、やっぱオレ、いい機会だしパート出るよ。そしたらこの湯飲みもべんしょー出来るかも知んないしッ」
三蔵「・・・・・・そう簡単に職は見つかんねえんだよ。」
悟空「でもオレこの前、介護のヤツ取ったんだぜ、資格!」
(↓はっとして。)
三蔵「てめぇ、いつの間に・・・・・・。」
悟空「・・・・・・こういうこと言うと三蔵傷つくかもと思って言えなかったんだけどさ。やっぱもう厚生年金だけじゃ不安なんだよ、老後とか。だから俺も働いてもっと貯金とか投資とか・・・・・・した方がいいかと思ったんだよ。」
見詰め合う二人。
だが何かが違う。
だが本人たちは気づいていない。
悟空「あ、そりゃ今介護だけじゃ長くはやれないけど!実務何年かでケアマネージャーとかも取れるんだぜ?そしたら・・・・・・」
悟空、見つめる三蔵の視線に言葉を止める。
三蔵「・・・・・・そうだな、おまえも一日中家の事ばかりしてたんじゃつまらないだろうしな・・・・・・。悪かったな、俺の変な意地で・・・・・・。」
(↑男の甲斐性にかけて妻には専業主婦でいて欲しかった派/笑)
悟空「つまらないとかそんなんじゃねえよ!でもお金たまったらさ、定年した後でもいいからぜってー二人で旅行とか行こうなッ。」
三蔵「ああ、そうだな・・・・・・。」
悟空、ふと湯飲みのことを思い出す。
悟空「あ、コレ・・・・・・どうしよう、次、部長さんいつ来んの!?」
既に新聞に目を落としている。
三蔵「ボンドかなんかでくっつけときゃいいだろ・・・・・・どうせ価値が分かってるとも思えんしな。そうでなけりゃなんとか理由つけて家には上げん。」
実は部長うんぬんの前に自分自身結構気に入っていたのだが諦める気になったらしい。
悟空「・・・・・・三蔵。」
新聞から目を上げない。
三蔵「仕事、探すんだろ。」
悟空「うん、オレ、ちょっと求人情報誌取ってくるな!」
三蔵「ああ、行って来い。」
悟空「行って来まーす!」
きれいにまとまったが結局茶を口にすることは出来なかった三蔵なのであった。