□第一話「悟浄の能力」
「……おい、テメェ、遊び人って一体なんの役に立つんだ?」
  三蔵の剣呑な問いに悟浄はむ、と眉を釣り上げた。
「役立たずのボーズにそういう風には言われたくはねえなぁ?」
「大人しく答えるのと死ぬのと選ばせてやる。親切だなあ、何せクリスチ
ャンだからなあ。」
  どうやら三蔵はキリスト教徒にならざるを得なかったことをかなり根に
もっているようだった。その手には黒光りする銃身がある。
「……そうッスねえ、こちら遊び人ですからねえ、遊ぶのがシゴト?みた
いなあ?」
「悟浄、良い加減によした方が……。」
―ガウン
 たしなめた八戒はげんなりと目を覆った。
「何も本当にブッ放すなよ!また戦闘の時に限って、『三蔵は弾を込めて
いる!』とかってなっちまうだろうが!」
「うるせえ、親切な俺様がテメェを神の御許に送ってやろうって言ってん
だよ、それが嫌ならさっさと答えろ!!」
  ……どうやら相当根に持っているらしい。これで本当に神の力を借りて
奇跡を起こせるのかどうだか甚だ怪しい。
  悟浄は観念してそうだなあ、と答えた。
「一応、踊りのスキルはあるぜ。」
「踊り?ってナニ?なんか役に立つの?」
  悟空の言うことに悟浄は分かっちゃいねえなあ、と肩をすくめた。
「踊りで仲間を癒したりとか敵を幻惑したりとかするワケ。」
「フーン。で、どんな踊りがあんの?」
  悟浄はまあ聞け、俺の豊富なレパートリーをと前置きして始めた。
「まず、『ふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「それから、『とてもふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「そんで、『ひじょうにふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「更に、『いきなりふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「まだ、『ビシバシふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「えーと、『ややふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「そうそう、『そこはかとなくふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「まだあるぞ、『なにはともあれふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「これは変わり種だ、『ふしぎな?おどり』だろ?」
「うんうん。」
「こっちもその仲間の、『ふしぎな!!おどり』だろ?」
「うんうん。」
「で、『もうどうにもとまらないふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「それと、『プレイバックふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「それから、『ヤングマンふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「まだまだ、『世にもふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「まだまだといや、『まだまだふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「で、、『かなりふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「で、、『やっぱりふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「で、、『元祖ふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「で、、『ふしぎなおどり95』だろ?」
「うんうん。」
「で、、『ふしぎなおどり98』だろ?」
「うんうん。」
「で、『ふしぎなおどり98ミレニアムエディション』だろ?」
「うんうん。」
「で、、『ふしぎなおどりEX』だろ?」
「うんうん。」
「まだまだ続くぞ、『続・ふしぎなおどり』だろ?」
「うんうん。」
「それで……」

「全部同じじゃないですか!」
「何処がどう違うんだ、何処がァッ!」
―ガウンどばしぐちゃ。
  部屋の隅でいらいらと二人の会話を見守っていた三蔵と八戒から同時
に銃弾と気功派が飛んだ。
「いってええ―ッ」
  巻き添えを食った悟空も頭を抱える。悟浄はひでぇな、と食って掛か
った。
「ちゃんと全部効果が違うんだぞ!?そこんとこがこだわりなんだぞ?」
「知るか!」
「なんか聞いてるとイライラするんですよ!他所でやってください、
他所で!」
  ハイハイ、と悟浄は折れることにした。その袖を悟空がぐいぐいと引
く。
「それでそれで?」
「テメェもまだ聞きてえのかよ……。」
  その後、悟浄は徹夜で踊りのレパートリーについて語る羽目になった
と言う……。
  その調子で大丈夫なのか、三蔵一行!!明日はどっちだファイト一発、
次回へ続く。